新エキスパンション霊気紛争の加入と、そしてなによりまさかの3枚の禁止カードの発行により激変必至のスタンダード環境。みなさんデッキ開発は順調でしょうか。
僕のほうはといえば遂に自分でカードを集めて組んでもいいレベルのものが出来上がりました。普段は秘密日記に書くんですが、今回は出来上がったものが新デッキではなく既存の延長でしかないごく普通のデッキなんで表に書きます。せっかくなんで回りくどく話していきます。



■そもそも強いデッキはどうやって作るのか

調整の方法論。
重要なのは「どんなデッキを作れるか」「どんなデッキを作りたいか」というアプローチと、「どんなデッキを組むべきか」というアプローチの両方を取ることです。自分の中では「前からのアプローチ」「後ろからのアプローチ」と呼んでいます。
まず最初にすべきなのは前者のアプローチです。最初から「どんなデッキを組むべきか」を考えようとしても、環境の前提を把握できていないためあまり意味がありません。そのため、とりあえず作りたいデッキをちゃちゃっと作って回してみるというのが最初にすべきこととなります。
ここでの目的は強いデッキを作ることではなく可能性を探索することなので、およそ上手くいかないようなアイデアでもとりあえず試してみることが大事です。頭よりもまず手を動かすフェイズですね。
ぶっちゃけるとここで作るデッキの99パーセントはゴミです。そんなに簡単に強いデッキはできない。ただ、デッキ単位でみるとゴミでもその中の特定のカードや組み合わせをみるとキラリと光るものが見つかるものです。あるいは環境のマナベースだったり除去の種類だったりに対してなんらかの気づきがあったりする。そうやって認識を積み上げていきます。
ある程度認識が積みあがってきたら今度は「どんなデッキを組むべきか」を考えるフェイズです。強いデッキは強いデッキを作るという意思と狙いを持って作るものであって、適当にいくつもデッキを作って試してみたらたまたまその中に強いデッキがあったというようなシナリオはありえないとは言わないものの期待できるものではありません。前段階で積み上げた認識をもとに、この環境はどのような特徴を持つのか、その中で勝てるデッキはどのような性質を持ちどのようなカードを使っているはずなのかということをじっくり考え、答えから逆算するような意識でデッキを作ります。

…ちょっと話が抽象的になっちゃったんでもう少し実践的な話をします。
実のところ、マジックで強いデッキはだいたい以下の2つのどちらかです。

①めっちゃ速い
②入ってるカードが強い

雑に感じるかもしれませんが事実です…。
スタンダードだとそれだけで勝てるほど圧倒的な速度のデッキが組めることはまずないため、スタンダードでは「強いデッキ」=「強いカードを使うデッキ」であると言ってしまって問題ありません。
そのため、抜けて強いオーバースペックカードを見出し、そのポテンシャルを最大限発揮できるようにデッキを組む、あるいは複数のオーバースペックカードを自然な形で同居させられるようにデッキを組むと強いデッキが出来上がります。
例えば環境で抜けて強いカードが石鍛冶とジェイスだということを見出し、その2つを自然な形で同居させつつそれぞれのポテンシャルが発揮できるようにデッキを組んだら最強デッキカウブレードの出来上がりです。
抜けて強いカードがエムラクール、コプター、ギデオン、アヴァシン、反射魔導士だったら? エムラクールを諦めてそれ以外のすべてを同じデッキにブチ込んだら青白フラッシュの出来上がりです。
上で「認識を積み上げる」という表現を使いましたが、その最も重要なことは抜けて強いオーバースペックカードがどれなのか見出すことです。



■では新環境のオーバースペックカードは何か

霊気紛争を除いた既存カードの中だけで見た場合、こうです。

確定…ギデオン
候補…霊気池、リリアナ、アヴァシン、緑ハルク、イシュカナ、呪文捕らえ、不屈の追跡者

霊気紛争だとこう。

確定…なし
候補…サヒーリコンボ、リシュカー、真意号、収集艇、艱苦の伝令、各種巧技


SOI環境、カンパニーと並んでメタゲームを支配していたオーバースペックカードがギデオンです。青白フラッシュの中核でもあり、青白フラッシュという居場所こそ失ったものの飛行戦力に溢れた青白フラッシュの消滅はPW全般にとって追い風で、ギデオンもその例外ではありません。間違いなく新環境でも台風の目となるでしょう。

一方霊気紛争のカードは癖の強いものが多く、コプターのような確かなパワーカードはありません。もしかしたら化けるかもしれないけどもしかしたら全然ダメかもしれない…というようなものが多いようです。



■注目の新カードの評価

とここでいったん趣向を変えて新カードを使ってみての感想。

・サヒーリコンボ
スタンダードはドローサポートがあまり充実していないので揃えるのはそこまで楽ではない。相手の場に充分なクロックがあるとサヒーリを出せないのもあり4キルはできたらラッキー程度で本当に狙うべきは6ターン目以降の突然の勝利。ソーサリータイミングのコンボなのでいくらでも妨害できる上にフィニッシャーをインスタントで出せる青いコントロールはしんどい。デッキ構築の自由度が高いため最適な構築が不明。

・リシュカー
強いが場に味方生物がいること前提のカードのため2ターン目に出した生物が除去されるだけで結構な失速をする。クリーチャー同士でぶつかり合うようなマッチでは鬼神だがコントロール相手ではあまり輝けない。ひたすら生物をサイズアップさせていくような戦略になるため燻蒸はとりわけ苦手。

・艱苦の伝令
このカード自体は強い。しかしこのカードを活かすためにデッキの中に8枚以上弱いカードが入ることになり、艱苦の伝令を引かなかったり処理されたりすると残念さだけが残る。そのため伝令を処理する手段が豊富なコントロールが辛い。


…何か気づくことがあるでしょう。
そう、新カード中心で組まれたデッキは揃いも揃って対コントロールが構造的に苦手なのです。

その後姿を消したとはいえ前回のプロツアーの決勝は青系コントロール同士の対決でした。そして青系コントロールは禁止カードの影響を受けておらず相対的に地位が上昇しています。不許可の加入によりPWの奥義で負けなくなったのも追い風。青系コントロールはメタゲームの中でいい位置におり、新環境では有力なデッキのひとつとなることが予想されます。トップメタでも全然おかしくないレベル。
新環境のデッキを考える上で、青系コントロールを意識することはマストとなるでしょう。やはりなんらかのPW(それも奥義狙いでないもの)はデッキに入れておきたいように思えます。




■反射魔導士禁止の意外な影響

また話は変わりますが、環境が変わると既存カードの価値も変わります。
あるときふと気づいたことは、オーメンダールの処理されやすさがこれまでよりもだいぶ下がっているということでした。
オーメンダールは世に出た当初より注目されていましたが、悲しいかなそのとき世は大カンパニー時代。せっかくオーメンダールを作っても反射魔導士で戻されておしまいでした。ローテーションを挟んで訪れたのは青白フラッシュ時代で、反射魔導士だけでなくメインに停滞の罠まで入っているため状況はむしろ悪化。フラッド対策として修道院自体はデッキに採用されてもオーメンダールの作成を目指すプランはわざわざ目指すようなものではありませんでした。
ところがなんと、禁止改定によってオーメンダールにとって初めて反射魔導士のいない世界が訪れました。メインに入るカードでオーメンダールを対処できるカードは停滞の罠、石の宣告、苦渋の破棄、青巧技くらいのもの。白が入ってないデッキではほぼオーメンダールの対処は不可能です。
そして更に、スラムの巧技の加入はオーメンダールにとって朗報です。なんと実質1マナで変身以上の半分以上達成。
反射魔導士の退場による対処されやすさの低下とスラムの巧技の加入による作成しやすさの上昇の2つによりオーメンダールはその価値を高めています。



■というわけでデッキ作成

ではこれまで書いてきたことをまとめてみましょう。

①環境のベストカードはギデオン。ギデオンは是非使いたい。
②コントロールを意識する必要がある。PWの連打が対抗策としては最もスマートか。
③スラムの巧技とウェストヴェイルの修道院の組み合わせは是非使いたい。

ここまできたら作るべきデッキは明らかでしょう。
というわけで、このデッキを使え!


『緑白トークン』

4 スレイベンの検査官
4 導路の召使い
3 霊気装置の展示
4 霊気圏の収集艇
4 ゼンディカーの声、ニッサ
4 ゼンディカーの同盟者、ギデオン
3 スラムの巧技
4 大天使アヴァシン

4 停滞の罠

3 ウェストヴェイルの修道院
4 梢の眺望
4 要塞化した村
1 平穏なる広野
7 森
7 平地

サイドボード未定(領事の権限、燻蒸、石の宣告、ディッチャ系などなど)



デッキ全体がパワーカードの詰め合わせとして構築されており、PW、トークン戦略、機体、巨大飛行生物と多角的な攻めの手段を持ち相手からすると対応することは非常に困難です。このあたりはSOI期と変わりませんね。
そして、SOI期と異なりスラムの巧技の存在によりマグロ相手なら4キルも可能なほどのブン回りがあるデッキになっていることは特筆に値するでしょう。やり方は以下。

1ターン目 スレイベンの検査官
2ターン目 導路の召使い(スレイベンアタック残り19)
3ターン目 スラムの巧技+ニッサでトークン(アタック18)
4ターン目 ギデオン即紋章、ニッサ-2 これでパワーの合計がちょうど18


緑白トークンは飛行戦力たちによって環境から締め出されていましたが、コプターと反射魔導士の禁止によって飛行で戦うデッキが消滅し息を吹き返しました。仮に飛行の多いデッキと当たってしまったとしても、新加入の霊気圏の収集艇が頼もしい存在となるでしょう。



ちなみに入ってないカードの解説。

・ニッサの誓い
収集艇と巧技にアクセスできないため不便。

・緑ギアハルク
サヒーリコンボが飛んでくるターンにタップアウトすると死ぬ。停滞の罠と一緒に構えられるアヴァシンのほうが優先度が高い。青巧技や燻蒸を意識してもアヴァシンのほうが優れている。

コメント

シミチン
2017年1月19日21:20

とりあえず組んでみます!

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